ウイントン・マルサリスは年が明けると、いよいよ忙しくなってきたようだ。

 彼のニュー・ミレニアムは、NYの名門ジャズ・クラブ「ヴィレッジ・ヴァンガード」からスタートした。久々にセプテットによるクラブ・ギグということで、ウイントン自身かなり張り切ったプレイを聴かせたようだ。僕のNYの友人が土曜日のステージを聴きにいったんだが、モンクやエリントンのナンバーを、それこそ火の出るような勢いでブロウしまっくっていたという。この友人も、やはりライヴ・パフォーマンスでのウイントンの実力はとび抜けていると電話してきたよ。ウイントンも、バンドのメンバーも、まさしくこれが本当のジャズの“スウィング”だというエネルギーを発散させていたという。彼は「この調子なら、3月の日本公演ではもの凄いステージが聴けるんじゃないか?」とも言っていた。
 考えてみれば、このヴァンガードでのギグに出演したセプテットのメンバーは、全員がリンカーン・センター・ジャズ・オーケストラのメンバーでもある。コンボのエネルギーをベースに、洗練されつくしたオーケストレーションを重ねていくLCJOの演奏スタイルの秘密が、あのヴァンガードのステージで解き明かされたといってもいいだろう。華麗なオーケストラ・サウンドと、バンド全体が一体化したグルーヴ感を両立させられるウイントンこそ、現代ジャズ・シーン最高の“スウィング・マスター”なんだ。
 帰り際にその友人が、楽屋口でウィントンに尋ねたそうだ。「3月に日本に行くんだってね」。すると、ウィントンはニヤッと笑ってこう答えたそうだ。「僕にとって日本は第二のホーム・グラウンドさ。僕らの後でサミー・ソーサー(シカゴ・カブス)がメッツと公式戦をやるんだろう。どっちがお客を楽しませるか、こいつは負けられないね」。