結成以来22年を経た今も不動の頂点に立つキース・ジャレット・トリオは別格として、今、世界が最も注目しているピアノ・トリオがe.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)だということは、ヨーロッパ21ケ国のジャズ・ジャーナリスト21人による投票で決まるハンス・コラー賞の「年間優秀ヨーロッパ人アーティスト賞」を昨年12月に受賞していることでも証明されています。

バッハ、バルトーク、ショパンをこよなく愛すピアニストのスヴェンソンと、ロイ・ヘインズ、ビル・フリーゼル、ジミ・ヘンドリックスに傾倒するドラマー、オストロムの二人が、リッチー・ブラックモア、チャーリー・ヘイデンを信奉するベーシストのベルグルンドと出会った1993年にe.s.t.は結成されました。
以来12年間、アメリカで生まれ育ったジャズの歴史や観念に縛られることなく、3人の異なった個性を貪欲にとり込み練り上げたことにより、e.s.t.はバッハからヘビ・メタ、ドラムンベース、エスニック、クラブ・ミュージックの要素をとり入れた独自のサウンドを磨き上げることに成功しました。
その結果スヴェンソンは、キース・ジャレットをして“最も素晴らしくオリジナリティを獲得したピアニスト”として注目されるまでに成長しました。
一つのユニットを長い間維持するために最も重要なものは音楽的な素養やテクニックではなく、お互いの心のコミュニケーションです。言葉を使わずに音楽で会話が出来て、その会話をリスナーに語りかけることが出来てこそ初めて、真のユニットと呼べるのです。
また、個々の演奏家にとって更に重要なのは、どれだけエネルギーのある音を発することが出来るかということです。PAを通した音しか接したことのない最近のファンにはなかなか体験出来ないことですが、マイルス、キース、パーカー、ロリンズ、偉大な演奏家はすべからく生音が大きく音色が美しい。
e.s.t.の繊細でダイナミックな生音を最上の状態でリスナーに伝えるために、PA、レコーディングともに長年同じエンジニアが参加しているということがありますが、ステージ上の3人に加え、会場から彼らの音をコントロールするエンジニアの存在あってこそのe.s.t.サウンドなのです。

熱い息吹を感じさせるヨーロッパのジャズ・シーンに早くから注目している一部の日本のジャズ・ファンがe.s.t.の演奏に初めて接したのがThe Synergy Live2003。翌2004年の単独来日公演の圧倒的な演奏で、多くのファンを魅了しました。e.s.t.は、2005年3月のヨーロッパ公演を皮切りに、韓国、中国、オーストラリア、アメリカ、日本の著名なコンサート・ホールやフェスティバルで演奏します。
“神が創造した音楽の化身”と言われるe.s.t.の今年の公演に多くの音楽愛好家に足を運んでいただけることを願って止みません。