「ハイクオリティな舞台空間の提供とは」

 TRIO JAZZ日本公演がなんとか無事に終了した。
 彼らは、以前より暗い照明を好んだ。暑い、明るいと言う彼らに、照明の小柳氏は微妙なゲージの設定にかなり神経を使った。音響の菊地氏は、繊細な演奏に対して出来るだけPAを感じさせないシステムに苦心した。この制作チームは、出来るだけシンプルな空間を創ろうと常に努力をしている。
 どこかで聞いたようなフレーズだが、「なにもたさない、なにもひかない」といったところだろうか。「観客各々が演奏を聴いて自分なりの色や景色を感じる事が大切」であり、出来るだけ演奏の邪魔をしない・観客の想像の邪魔をしない空間の提供に努力することだ。簡単なようだがさにあらず、多目的に使用可能な会場ゆえの使い辛さが多々ある中で奮闘した、各スタッフの知恵と努力に感謝する。
 これは、ある地方都市での事だが、いくら努力をしても会場のピアノのメンテナンスが悪ければどうにもならない。挙げ句の果てに「このホールにはスタンウェイは1台しかなく、クラシックホールのピアノは移動させない」では話にならない。調律師がガンバッテもパーフェクトというわけにはいかない。腐っても鯛とは言うが、腐ったピアノはたとえスタンウェイでも使えない。
 ホール運営管理の現場の方々よりも、上層部の人々に「外見ではなく中身に愛情ある管理への変革」をお願いしたい。観客から見れば、ホール運営管理の方々もこのコンサートの大事なスタッフの一員だと思っているに違いないのだから…。文化・芸術に対する観客の欲求・クオリティの向上が速度を増す今日、管理の在り方がこのままでは、ますますギャップがひろがるような気がする。
 さて、このTRIOは非常に仲が良い、いや信頼し合っている。それでなければこんなに素晴らしいアンサンブルは成立しない。演奏し始めて4,5分でそれぞれの音色がなじんでくる。相手の音をよく聞いているのだ。会話しているようだ。キースの指は触角のごとく繊細に、ゲイリー、ジャックと共に「客席の呼吸、音の返り」を聞いてイメージを曲に反映させる。会場全体と一つになろうと突き進む。観客が距離も照明も近く・明るく感じたとき、又、自分達も演奏したかのような観客のため息と大きな拍手が沸き、空間が最高に膨らんだとき、この仕事をして良かったと思う。ホール管理の現場の方々もその瞬間を知っているハズである。いろいろなことがあっても、この瞬間のために皆で努力して良かったと思う。こういう繊細なアーティストは毎日胃が痛むと言いながらも、その感動と興奮を冷ましに今夜も皆で街へ…。時には、少し悔しさも抱えて。


舞台監督 柳川 泰孝

 

 

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