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キース・ジャレットの照明は、いつもながら他の催し物に比べて、非常に神経を使う。それは明るさと熱さの関係で、明るくすればそれに比例して熱量も増すので、演奏者の気分を照明によって邪魔しないようにし、かつ、客席のどこからも暗すぎないようにしなければならないからだ。キースの演奏会は、クラシックのピアノ演奏会に近いものがあるが、クラシックの演奏会の照明ではあまりにも雰囲気が味気ないので、JAZZの演奏会に合ったそれなりの格好良さが欲しいと思う。
そうなると、灯体の数も多くなり、数が増えれば当然、熱量も増すわけで、その調整が難しくなってくる。そんなわけで、毎回演奏者に当たる全ての灯体に、熱を吸収するフィルターを入れたり、なるべく高く、遠くから当てるようにしているが、その劇場の湿度や距離によりなかなかうまくいかない場合がある。明るさも大体、フルライトの3割から4割程度しか出していないが、目に入る角度によって眩しく感じたり、熱く感じたりすることがある。またその時の演奏者の体調や気分も大いに関係してくる。
通常は客席の後方や、客席の横にある調光室で照明の操作を行っているが、長年の経験で、キース・ジャレットの演奏会では、演奏の途中でキースが、「熱い」とか「眩しい」などと言ってくることがあったので、その苦情にすぐに対応できるように、舞台袖で出来る劇場では、そこで行っている。今回の演奏旅行でも名古屋の愛知芸術劇場で、3曲目の途中で舞台袖に来て「Too Bright!」と言うので
すぐに全体を2割程度下げて対応した。その時に思ったことは、リハーサルの時も、3曲目の途中までも平気だったのに、何故今ごろ「眩しい」と言ってきたのかとその原因を考えたら、愛知芸術劇場のピアノの状態が気に入らなかったからなのでは?と思ったのである。
そんなわけで、キース・ジャレットの演奏会の照明は、いつもとても神経を使わされているわけである。しかし、いつ聴いてもキースの演奏は素晴らしく、緊張感があるので、照明計画者としては、やりがいのある仕事である。音響さんは、もっともっと大変な神経をつかってやっているのですよね。ご苦労さまです。
舞台照明計画者 小柳 衛
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