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ザ・シナジー・ライブ2003に来日するピアニストたちは、一人ひとりが豊かな才能を持ち、輝かしい実績の持ち主ばかりだが、最も異色な経歴の持ち主としては、ジャン・ミッシェル・ピルクの名前が真っ先にあがる。
ピルクがプロのピアニストに転身することによって、フランスのロケット研究がどれ程遅れをとったかを知る由もないが、世界中のジャズ・ファンの目をフランスに向けさせたことは言うまでもない。1987年まで、ピルクはフランスのトゥールーズにある国立特別研究所でロケットの科学者だったのだから。
幼い頃にクラシックを学んでいたピルクが、ジャズ好きの伯父の影響でジャズ・ピアノを独学でマスターするのにそれ程時間はかからなかったし、科学者時代にも、夕方以降はピアノの練習に時間をあてていた。
アメリカの観客を驚かせたスイートベイジルでのライブで、ピルクは「朝日のようにさわやかに」などのスタンダード・ナンバーを積極的にとりあげている。
CDに収められたそれらの演奏は、ピルク自身が大好きなウラジミール・ホロヴィッツのように、大胆に指が鍵盤上を舞い、同じスイートベイジルをマンハッタンのフランチャイズとしていた山下洋輔が弾く「枯葉」や「オーバー・ザ・レインボー」に似て、先の読めない緊張感に溢れている。
今回来日するピアニストの中で、最年長でありながら最もフリー・ジャズに近いアグレッシブなセンスを発揮するピルクは、山下洋輔同様に乾いたセンチメンタリズムの持ち主なのだ。 彼の演奏に度肝を抜かれたアメリカの観客は、ピルクのことをフレンチ・メルドーと名付けた。

公式ページ: http://www.jmpilc.com


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