maria joao & mario laginha
多彩な声色のエキセントリック・シンガー、マリア・ジョアン
ジャズの枠には収まらない幅広いサウンドでポルトガルのみならず、ヨーロッパ全域で精力的に活動する注目の女性シンガーがマリア・ジョアンである。マリアの活動歴は20年にもなり、一貫してジャズを媒介にポルトガルのフォーク・ミュージックやブラジル音楽などワールドミュージックを取り入れた柔軟な音楽性を追求してきた。80年代前半から自己のトリオで活動、80年後半には日本人ピアニスト高瀬アキと共演。93年にマリオ・ラジーニャとパートナーシップを組み、以来6作のアルバムをリリースする。これまでジルベルト・ジル、レニーニ、マヌ・カッツェ、ディノ・サルーシ、ラルフ・タウナー、ディノ・サルーシ、トリロク・グルトゥなど世界各国の多彩なミュージシャンと共演してきた。

一聴してまず耳に飛び込むのはマリアのエキセントリックなヴォーカルだ。鼻にかかったキュートな歌唱は、まさに矢野顕子のポルトガル版と言える。その声のユニークさはビョークをも引き合いに出して語られるほど唯一無二なもの。そしてマリオを中心にしたバックのジャズ〜ワールドミュージックを包括したプレイが多面的な表情をつけ、まさに国籍不明の未知のサウンドを展開している。アーティスト写真ではエスニックなメイクや衣装で写っているマリア、ライヴでもそんなシアトリカルな一面を見せてくれるのだろうか。ふたりの描き出すアンノウン・ワールドへの興味は尽きない。

そして来日直前、絶好のタイミングで彼らの新作が届いた。『アンダーカヴァーズ』というこのアルバム、1曲を除いて全曲が他のアーティストのカヴァー曲から成り立っている。取り上げたアーティストはビートルズ、U2、スティーヴィー・ワンダー、トム・ウェイツ、ジョニ・ミッチェル、スティング、ビュークといったロック/ポップスからアントニオ・カルロス・ジョビン、カエターノ・ヴェローゾ、レニーニなどのブラジル音楽までこれまた多彩。カヴァー・アルバムのアイデアは実に1995年から彼らが温めていたものだという。自らが愛する曲ばかりを選んだというこの作品、それぞれの曲がマリアとマリオによる短編小説と言えるストーリー性のある作品に仕上がっている。お馴染みのメロディーが二人の手によってどうアレンジされているか、ぜひ多くの人に聴いていただきたい。

彼らは2月から5月にかけてポルトガルを中心にヨーロッパ・ツアー中。満を持して日本へやってくる。

ユニバーサル ミュージック(株) ジャズ本部 編成担当 工藤浩巳

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