The Origin
ジャックとゲイリー、考えても彼ら以外にいなかった
柔軟なドラムス&ベースのコンビネーション

 スタンダード・トリオを始める時にゲイリー・ピーコックとジャック・ディジョネットを選んだのは、ECMのマンフレート・アイヒャーのアイデアだった。マンフレートからこのアイデアを聞いたとき、私は「ちょっと待ってくれ」と言った。ほかにもいい考えがあるかもしれないと思ってね。ところが考えてもそれに勝るアイデアは出てこない。彼ら以外には考えられないという結論になったんだ。
 ジャックとは昔から気があっていたから、ドラムスは他のアイデアに思い巡らすことはほとんどなかった。むしろ私が考えたことはドラムスとベースのコンビネーションという点だった。ジャックはビートに乗ってプレイするほうで、それが私も好きなんだが、そのうえでジャックはいろいろなやり方でプレイする自由さを持っている。70年代に一緒に演奏していたベース奏者のチャーリー・ヘイデンは、はっきりと自分なりのプレイしかしない。だからチャーリー・ヘイデンとジャック・ディジョネットというコンビはあまり良い考えではないと感じたし、チャーリー・ヘイデンよりはもっと柔軟性のあるベースと一緒にやりたいと私は思っていた。スティーヴ・スワロウのことも考えたが、彼は当時もっぱらエレクトリック・ベースを弾いていたし。もちろんエディ・ゴメスのことも考えた。しかし私が求めていた、何が出てくるかわからない、白紙状態のプレイヤー……は、やはりゲイリーだと思えた。つまり、マンフレートのアイデアは当っていたわけさ。
 レコーディングの前夜、私はみんなと意志を確認しあうためディナーを一緒にとることにした。このディナーは凄く重要な意味を果した。はじめのうちゲイリーは「なんで今頃改めて<オール・ザ・シングス・ユー・アー>をやらなきゃいけないんだ、もう何百回とやり尽したんじゃないの」と言った。それで私は言ったんだ、「君とはまだ1度もやったことがないよ」ってね。これで決まった。会話が進む中で、一瞬曇りを見せたりしたゲイリーの眼もやがて輝き始めた。「オーケー、オーケー、メイビー、オーケー」というような調子でね。ディナーが終った段階でもう私は、何かが生まれるだろうことを確信していた。スタジオに入る前からね。そしてスタジオで初めて音を出した時、すべてははっきりした。時代時代を代表する偉大なプレイヤーというのは限られているが、ゲイリーもジャックも紛れもなくそのカテゴリーに入るミュージシャンだ。この20年、ジャックは良くなる一方で、今が最高といっていいし、ゲイリーは非常に柔軟で、何でも良いものならOK、何をやっても問題ないんだ。