Standards Trio
その良さが忘れられつつある今だからこそ一層大切にすべき、
アメリカの偉大な音楽遺産
このトリオはきわめてアメリカ的な要素を打ち出したジャズ・ピアノ・トリオといえるかもしれない。アメリカン・ソング・ブックはこのトリオの特質になっているが、アメリカの作曲家によってつくられたスタンダードはアメリカの偉大な音楽遺産、そこには典型的なアメリカの文化が宿っている。30年代から60年代にかけての良き時代のアメリカを反映した典型的な音楽文化の結晶……その良さが忘れられつつある今だからこそ、一層大切にしないといけないのだと思う。このトリオはビバップをはじめジャズの伝統を大切にしながら、活動期間は短かったがビル・エヴァンスがスコット・ラファロやポール・モチアンと共に切り開いたピアノ・トリオの革新性を受け継ぎながら、同時に誰も試みなかったフリー・フォームによる表現にも取り組んでいる、というところがユニークだと思う。一方でスタンダードをプレイしながら、その一方でフリー・ミュージックも演奏するというトリオは歴史上でもほかにあまり例がない。それにこのトリオは、スタートした時からスタンダードとフリー・フォームにチャレンジし、同時に素晴らしい成果を生んできた。2001年に日本で開いたコンサートを録音した『オールウェイズ・レット・ミー・ゴー/ライヴ・イン・トーキョー』というアルバムに聴かれる演奏は、私たちのトリオが確立したフリーな形式による演奏の典型といっていい。これこそが真にフリーな演奏なんだ。既成のスタンダードを演奏するのと、フリー・フォームで演奏するのとでは、根本的な違いがあるように受け取られるかもしれないが、そのどちらでも私たちの精神は自由に解放されている。それこそがこのトリオが到達できた未踏の境地といえると思う。音楽的な体験において、音楽的にも個人的にも、すべてを犠牲にしていいと思えるほどの環境でプレイできるということほど素晴らしく幸せな体験はない。私はプレイしている瞬間に自分自身の人生すべてを注いでいる。そのためには、演奏者どうしが互いに深い信頼関係で結ばれている必要がある。確信と、相手の心を察知する洞察力が必要だし、音の奥に秘められた心を聴きとる耳もなければならない。
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