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 ポップス系レーベルと契約を交わしてのアルバム・リリース、ドイツのアクト・レーベルとのライセンス契約で実現したスカンジナヴィア以外での欧州リリース、そして精力的なツアーが、彼らを国際的に注目されるバンドへと導く要因であったことは確かでしょう。が、その原動力は、彼らがアルバムごとに見せてきたサウンドの発展にほかありません。
 3、4作目に関わったデンマーク人プロデューサー(録音およびマスタリング・エンジニアでもある)はポップス系の人材ながら、ジャズはアコースティックな音楽である、という考えから彼らに実験を許さなかったそうです。そして99年作のレコーディングも、それまでと同様アコースティックなセッティングで行なわれました。が、録音を終了しプロデューサーが去った後、余っていたスタジオ時間を利用して3人はシンセサイザー、パーカッション、ボーイング演奏をするなどして表題曲をいじったことにより新たな発見をします。その新しい視点を象徴するように、61年に人類最初の宇宙飛行をしたソ連の宇宙飛行士の名を冠した『フロム・ガガーリンズ・ポイント・オブ・ヴュー』を新たな e.s.t. サウンドのスタートに、以降、彼らはあらゆる音楽に開かれた耳と心をオープンに、積極的に実験を試みてゆくこととなります。
 『フロム・ガガーリンズ・ポイント・オブ・ヴュー』以降、定着したのが"All music written, performed, and produced by E.S.T."のクレジット。スヴェンソンの作るメロディーをベイシックに、3人の演奏によるクリエイティヴな肉付けがなされて生まれる"e.s.t. サウンド"は『ストレンジ・プレイス・フォー・スノウ』からさらなる進展を遂げます。エレクトリックな要素を加えたアコースティック・ジャズ・トリオはその進展の過程で、オーヴァー・ダブに頼ることなくライヴで、アコースティック楽器にエフェクター類をかませ様々に変化させたサウンドを織り込んで聴かせるようになります。
 オストロムはディストーションやディレイ・ペダル、ベルグルンドはマルチ・エフェクト・ギター・ペダルを使用、そしてスヴェンソンもギター用エフェクターを用い、ピアノ本体の中にまで手を伸ばし直接ピアノ弦を掻き鳴らすなどして、随意サウンドに変化を生み出します。そこに響きでるのが、彼らジャズを探究する以前に熱く聴いていた、そして今も好きだという往年や現在のロックやポップスのサウンドのテクスチャーであり、そのユニークなサウンドで多くの聴衆を魅了しているのです。
 本邦デビュー作である『グッド・モーニング・スージー・ソーホー』発表後の2000年秋のパフォーマンスを収録したDVD『ライヴ・イン・ストックホルム』を見ると、『ストレンジ・プレイス・フォー・スノウ』発売後の初来日時のパフォーマンスがすでに進展した音楽であったことが明らかです。その後もアルバムとツアーを重ねるごとに彼らの進展はつづいていますが、彼らのサウンドがいかに生み出されるか、それがより鮮明にわかるのがライヴ・パフォーマンスです。
 現在、彼らはワールド・ツアーの真只中。サウンド・チェックに使われるのは未発表の新曲、ということは、長いツアーのステージ・パフォーマンスの前のサウンド・チェックを通して着々と新曲たちも完成しつつあるということです。ユニバーサルミュージックを通じて世界的に発信されると伝えられる『ヴァイアティカム』に次ぐブラン・ニュー・アルバム『TUESDAY WONDERLAND』の到着もそう遠いことではないでしょう。ツアーは11月いっぱいまでつづき(6月から数えると約50公演)、そして2007年最初の公演で彼らは日本の地を踏みます。
keith sound profile